「我々においては、すべてが精神的なものに集中する」――これは当時の時代情勢におけるひとつの事実を歴史学的に確認した言葉ではけっしてなく、〈存在〉そのもののうちに隠されたある生起の、つまり来たるべきもののうちにまで届くはるかな射程をもつ生起の、思索と詩作による命名である。この生起を予感することができるのはごく僅かの者たちのみ、あるいはおそらく、それを言い、思索する者のみであろう。(『貧しさマルティン・ハイデガー、フィリップ・ラクー=ラバルト:西山達也訳・解題)