呪術とはシンボリズムの体系ということができる。なぜなら呪術の世界では、シンボル――すなわち、形が呪力を生み出すと考えるからである。キリスト教世界では十字形が悪魔を祓うなどの力を発揮することはよく知られているが、このほかにもさまざまな呪的シンボリズムが私たちの周りには溢れている。たとえば神域の注連縄(しめなわ)、引き出物の水引、神木に結ばれたお神籤(みくじ)、これらはみな、魂などをつなぎ止める「結び」の呪術を表わしている。古墳の壁画や石棺・埴輪(はにわ)などの装飾に使われる直弧文(ちょっこもん)も結びの呪術の一種で、古墳に葬られた人の魂を護り、悪霊(あくりょう)の立ち入りを阻止する意味があった。(『呪術・占いのすべて 「歴史に伏流する闇の系譜」を探究する!瓜生中〈うりゅう・なか〉、渋谷申博〈しぶや・のぶひろ〉)