小学生でもできる営業管理

「何だよ、この数字。もっと頑張れ!」、「今月はよかった。よくやった!」などなど……。
 確かに結果の悪い人を怒ったり、結果のよい人をたたえたりしてやる気を起こすことは、営業管理に必要です。しかし、数字の裏には努力だけがあるわけではありません。やり方と経験の有無、担当分野・地域・商品だけではなく関連業務やタイミングの問題など、いろいろな要素が重なった結果として数字が出ます。
 結果にしか興味がない営業管理をしていると、どんな結果が生まれるでしょうか。
 まず、社員は本当の情報をあげなくなります。どうせ結果が悪いと怒られるだけですから、あげても意味がありません。
 次に、管理職は怠慢になります。根性を入れてやれば何とかなると思い込み、戦法・戦術の研究を怠り、効率悪化を放置します。
 最後に、経営者は傲慢になります。モノが売れるかどうかは営業マンのやる気次第だと信じ込んで、自社の事業や製品の社会的意味を問わなくなり、顧客の気持ちを無視してしまいます。
 また、結果にしか興味がない営業管理をしていると、どんな企業になるのでしょうか。
 まず社員は、モチベーションが下がるでしょう。会社側は戦略、事業と仕組みについて努力しないのに、社員には犠牲を強いているからです。
 次に人材が育ちません。精神論信者が増え、管理職は権威と権限にしがみつき、井の中の蛙になるからです。
 最後に、経営者は裸の王様になります。過去の成功を人格やカリスマ性に結びつけ、その威厳を振りかざして組織を追い立て、営業現場や顧客の中で起きている小さな変化を読み取ろうとしなくなるからです。
(『やっぱり変だよ日本の営業 競争力回復への提案』宋文洲)