このようなときでも、子どもから接触を求めてくる場合には、やはりなるべく受け入れてあげることは必要だ。ただ、親がそれを多少不快に感じ始めるというのは、順調に子離れが進んでいるからこそでもある。
 不快に感じるのに無理に触れるのはよくない。不快なのに無理やり触れようとすると、必ず触れ方に影響が現われる。たとえば、手のひら全体で降れずに指の腹だけで触れるようになる。すると触れられた子どもは敏感にそれを察知する。そして触れてもらっているのに心地よくない、という矛盾を感じるようになる。
 これは「ダブル・バインド」とよばれ、子どもの心を二つの異なるメッセージで板ばさみにしてしまうことになる。「愛している」というメッセージと「でも触れたくない」という二つのメッセージの矛盾に気づいた子どもは、どちらを信じたらよいのか分からず混乱してしまうのだ。
(『子供の「脳」は肌にある』山口創)

育児児童心理