経典講義を伴う多数参加型の代表は鳩摩羅什(くまらじゅう)の訳場(やくじょう)である。その具体例は後にみるが、数十人、時には数百人あるいは千人以上の僧侶や在家信者が集う、一種の法会(ほうえ/仏教儀礼)だった。翻訳に従事する人々には、その訳場の中心人物と、「筆受」と呼ばれる者、「伝訳」(でんやく)と呼ばれる者などがおり、彼らの翻訳作業を見守る形で多数の聴衆が列席し、翻訳と同時に当該経典の解説や理解の難しい箇所を議論したりもした。(『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』船山徹)

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