歳月はただ過ぎ去り、代わり映えのしない一年が繰り返すだけだった。貧しさ、窮乏、諦めにも似た思いがつのり、人生で確かなものはひとつの悲しみ、時とともに当たり前になってしまった悲しみだった。父親と同じく、彼も愚痴をこぼさなかった、一度として。(『火によって』ターハル・ベン=ジェルーン:岡真理訳)