服従は、社会生活の構造において、とくに目立つ基本的要素である。ある程度の権威体系はあらゆる共同生活に必要なものであって、従わないにせよ従うにせよ、他人の命令に反応しなくてもすむのは、孤立した生活をしている人だけである。1933年から1945年までに、罪なき数百万の人たちが命令によって組織的に虐殺されたことが確認されている。ガス室が建てられ、死のキャンプを見張りが監視し、品物を製造するときと同じように能率的に、毎日の割当て数の死体が生産された。この非人間的な政策は一人の人間の頭から出たものかもしれないが、非常に多くの人たちが命令に従ったからこそ、大規模に施行することができたのである。(『服従の心理 アイヒマン実験スタンレー・ミルグラム岸田秀訳)