春秋時代というのは、その期間が320年ほどあり、それぞれの君主がそれぞれの国で、最高の権力者でありえたのは、はじめの100年間くらいであったろう。その期間がすぎると、各国の権柄(けんぺい)は大臣たちに握られはじめた。大臣たちの意識には、――われわれが君主を君主たらしめているのだ、という誇色が濃厚となり、かれらは国家に奉仕し君主に忠誠をつくすことより、自家の栄貴を第一に考えはじめた。(『夏姫春秋宮城谷昌光