グレゴリー・ペレルマンというそのロシア人数学者は、査読つきの専門誌に論文を発表しなかった。そして、ほかの数学者たちが自分の証明を綿密に分析した論文を、きちんと検討することはおろか、それについて論評することすら拒否したのだ。世界中の一流大学から降るように舞い込んだポストの申し出もすべて断った。2006年には、数学における最高の栄誉であるフィールズ賞が授与されるはずだったが、彼はこれも辞退した。そしてそれ以降、ペレルマンは数学者ばかりか、ほとんどすべての人と連絡を断ってしまったのである。(『完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者マーシャ・ガッセン:青木薫訳)