声は人間がもつきわめて強力な道具であり、意思の疎通において何より重要なものと言っていい。声は体の一部であると同時に心の一部でもある。生まれてすぐに経験することや、社会の慣習という強い圧力によって、私たちの声は影響を受ける。声は内なる世界と外なる世界をつなぐ架け橋だ。心の奥深くにある隠れ家から出発して、公の領域へと出ていく。声を通じて、自分が自分をどうとらえているかがあらわになり、どうなりたくないかと思っているかまでもが暴かれる。声はいろいろな情報を教えてくれる。恐れ、力、不安、卑屈、活力、真偽。他者についても自分自身についても、それらを知る手がかりを与えてくれる。(『「声」の秘密』アン・カープ:横山あゆみ訳)