(富永)仲基の説は『出定後語』にまとめられているが、多数の仏教経典はブッダ一人が説いたものでなく、歴史的に順次に成立してきたものだというもので、近代の仏教学の方向を完全に先取りしている。それを基礎づける理論が加上説で、要するに時代的に後から出てくる説は、それに先立つ説に何らかの新しいことを付け加えることによって、自己の優越性を示そうとする、という考え方である。逆にいえば、新しいことが付け加わっている文献は、それがないものよりも時代的に新しく成立したということになる。(『思想としての仏教入門末木文美士