わたしは野生動物からなにか特定の生き方を学ぼうなどとは考えていない。(中略)けれども、無心ということを、身体感覚だけで生きる純粋さを、偏見動機なしで生きる気高さを、いくらかなりとも身につけることはできるだろう。イタチは必然に生き、人は選択に生きる。必然を恨みつつ最後にはその毒牙による愚劣な死を遂げる。イタチはただ生きねばならぬように生きる。わたしもそう生きたいし、それはすなわちイタチの生き方だという気がする。時間と死に苦もなく開き、あらゆるものに気づきながらなにものも心にとどめず、与えられたものを猛烈な、狙い定めた意志で選択する生き方だ、と。(『石に話すことを教えるアニー・ディラード:内田美恵訳)