余幼くして煩瑣(はんさ)なる政情を知らず、太平三百年の夢破れて初めて世事の難(かた)きを知る。男子にとりて回天の世に生まるること甲斐あることなれど、ああ自刃して果てたる祖母、母、姉妹の犠牲、何をもってか償わん。また城下にありし百姓、町人、何の科(とが)なきにかかわらず家を焼かれ、財を奪われ、強殺強姦の憂目をみたること、痛恨の極みなり。(『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書石光真人編著)

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