そのため二重スリット実験では、発生源から後ろのスクリーンのところまでやってくるのは1個1個の原子ではなく、波動関数が伝わってくるのだと考えなければならない。波動関数はスリットのところに来ると二つに分かれ、そのそれぞれが一方ずつのスリットを通過する。このとき考えるべきは、「抽象的で【数学的】な量がどのように時間変化する」かであることに注意してほしい。【実際には】何が伝わっているのか、と質問するのは的外れだ。それを確かめるためには観察しなければならないが、観察しようとするとただちに結果が変わってしまう。観察と観察のあいだに【実際に】何が起きているのかを問うのは、冷蔵庫の扉を開ける前になかのライトが点いているかどうかと質問するようなものだ。ちら見した瞬間に変化してしまうので、けっして知ることはできないのだ。(『量子力学で生命の謎を解く 量子生物学への招待』ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン:水谷淳訳)

量子力学