日本に数ある呪術のなかでもっとも本格的な呪法といえば、宗教修法(しゅほう)が中心である。密教は、インドの伝統宗教ヒンドゥー教の影響を受けて、大乗仏教成立史上の末期にあたる西暦7世紀後半にインドで発生した仏教の一流派で、仏教の教説中、最高深秘(じんび)とされる。中国を経由して真言(しんごん)密教の開祖・空海や天台宗の最澄、円仁、円珍らによって日本に移植された巨大宗教である。その思想は、人間が身体と口と意の三つを通じて仏尊と交流し、その加護を受けて即身成仏(そくしんじょうぶつ)することを目的としているが、それにともない、さまざまな願望を成就させる現世利益(げんぜりやく)の重要性が強調され、そのためのシステマティックな加持(かじ)・祈祷の諸術が集成され、継承されてきた。(『図説 日本呪術全書』豊島泰国)