「思考実験」という言葉はもともと、オーストリアの物理学者であり哲学者でもあるエルンスト・マッハ(1838-1916)が、はじめて注目した概念である。マッハは自然科学における「思考実験」を説明するだけでなく、次のように語っている。「夢想的なアイデアマン、空中楼閣の建築家、小説家や社会的・技術的ユートピアの構想家たちは、思考の中で実験する。堅実な商人も真面目な発明家や学者もやはり思考実験をおこなう。彼らはいずれも或る状況を表象し、その状況から生ずべき或る結果の期待、推論を当の表象に結びつける。彼らは思考実験をするわけである」。(『思考実験 世界と哲学をつなぐ75問』岡本裕一朗)