現象的には、ローマ帝国は蛮族(ゲルマン)の侵入によって滅亡したかにみえる。しかし、ここにヒエロニムスが記しているように、「敵の剣より内乱によって」、「剣より飢えによって」、つまり、外力の破壊作用よりは、組織のインテグレイション解体によって、あるいはシステム不全によって、内部からくずれ去っていったのである。(『文明の逆説 危機の時代の人間研究立花隆
 換言すれば、価値的には中央の本尊の力が、順に周辺に遠心的に波及するとともに、逆に外周部の神々が、内なる本尊に向かって求心的に帰依していくのである。これら順・逆の二様の流れ、難しくいうと逆対応の流れが、広・狭両義のマンダラには必然的に認められることを忘れてはならない。マンダラは、固定化された存在ではなく、力の動きを示すダイナミズムを内包した一種の磁場の世界でもある。(『密教とマンダラ』頼富本宏)

密教
 この【うらみ】という心の病気は風邪(かぜ)のように誰(だれ)でも、どの過程も、経験をもっています。
 この、【ざら】にある万人(ばんにん)の内的な悩(なや)みから正しい人生理解に導こうとされた釈尊(しゃくそん)の御心(みこころ)は、尊いものがあります。しかし、問題は、いかに、この私どもの内心に【うずき】、【いたみ】を与えている「うらみ心」を除き去ってゆくかという実際の方法であります。
(『法句経講義友松圓諦

ダンマパダ
 ところで皆さんは「日本一の大河」といわれると、どの川を思い浮かべるだろうか。おそらく学校では、長さでは信濃川、大きさ(流域面積)では利根川と習ったはずだ。ところが、これはあまり正確とはいえない。本当は石狩川なのである。
 その昔石狩川は、イシカリベツ(「非常に屈曲する川」の意味)の名のとおり、原始の姿そのままに蛇行を繰り返し、大きな石狩平野をわがもの顔で悠々と流ていた。ところがその貫禄が災いして、たび重なる氾濫をまねき、人々を苦しめてきた。
 そこで、洪水をできるだけ早く海に流そうと、曲がりくねった川道をまっすぐにする改修工事が、約70年にわたって続けられた。そのため、石狩川は100キロ以上も短くされ、かつての70パーセントの長さになってしまったのである。
(『日本の分水嶺』堀公俊)
 黄河は長さ5464km、世界で7番目に長い川です。驚くべきは長さよりもその流域面積の大きさで、98万平方kmと、日本の面積の約2.6倍にもなります。(中略)
 一方の揚子江は、長さ6380kmと世界で3番目に長い川です。流域面積は黄河を上回る117万5000平方kmで、これは中国全土のじつに5分の1に相当します。
(『川はどうしてできるのか 地形のミステリーツアーにようこそ』藤岡換太郎)
岡ノ谷●これを「ハンディキャップ原理」と言うんです。もともと無駄なことをすることが生物学的な資質の強さを表すという考えで、ものすごく説明力の強い原理なんです。最初は冗談だと思われていたんですが、実際そういう形質を埋め込んでシミュレーションするといろいろなものが進化するというのがわかってきた。今は進化生物学ではきわめて大切な原理になっていて、それを使って、たとえば音楽の進化を説明しようという人もいますし、僕はそれを使って、言語の進化も説明しようとしているんですけど。(『言葉の誕生を科学する』小川洋子、岡ノ谷一夫
小林●さらに中国人の体質がわかったのは、わしが描いた『台湾論』の北京語訳が台湾で発売されたときだよ。台湾にいる国民党系の支那人たちがわしの『台湾論』を焚書(ふんしょ)するんだから。こうれはもう異常な奴らだと思わざるを得ない。そのうち人民日報もわしを批判し始めたし、中国社会科学院で「小林よしのり研究」なんて論文も発表された。(『はじめての支那論 中華思想の正体と日本の覚悟小林よしのり有本香
 幸福を探すと、どんどん苦しみが増える(『結局は自分のことを何もしらない 役立つ初期仏教法話6アルボムッレ・スマナサーラ
 人口移動の少ない静的社会では、同じ村落に祖父も孫も住んでいた。つまり、みんなが同じ体験をしていた。同じ体験をしていたので感情や価値観も同質的であった。同質的社会では以心伝心が可能である。自分がこう思うのだから相手も多分そうであろうと推論しても大体当たる。しかし今日のように、背景の違う人間同士が一緒に人生のある瞬間を過ごすような異質的社会になると、自分がこう思うから相手も多分そうであろうと推論できない。自分はこう思うが相手はどうかなときいてみなければわからない。つまり、以心伝心ができないのである。そこで、いちいちことばに出して相互にわかりあう必要が出てきた。カウンセリングが登場するゆえんである。(『カウンセリングの技法國分康孝
 教育は社会集団の維持と集団目標達成という機能がつよく、カウンセリングは特定個人の維持と特定個人の目標達成という機能がつよい。(『カウンセリングの理論國分康孝
 日本には約600種の鳥がいます。しかし、常時これだけの鳥が生息しているわけではありません。日本にいる鳥は、1年中いる鳥と、ある特定の季節にだけ見られる鳥に分けることができます。前者を留鳥(りゅうちょう)、後者を渡り鳥といいます。(『身近な鳥の生活図鑑三上修
 私が言いたいのは、こういうことです。
 田老や釜石など東日本大震災で被災した地域は、「想定外」だったから被害を受けたわけではありません。また、「想定が甘かった」わけでもありません。そうではなくて、「想定にとらわれすぎた」のです。
(『人が死なない防災』片田敏孝)

災害
 日本のサラリーマンは納税者でなく担税者である。納税者であれば、カネを出すなら口も出す、そんな意識が発達するが、担税者はむしりとられるだけの存在でしかない。確定申告で税金を支払う者は年間850万人、それに対して給与所得者5200万人のうち4200万人が源泉徴収と年末調整をすべて会社まかせにしている。(『続・日本国の研究猪瀬直樹
 誰でも、「鬼畜米英」という言葉を知っていると思います。この第二次世界大戦をあおった大変有名なスローガンは、歴史の教科書にも出ていて小学生でも暗記させられます。実は、この言葉は、アサヒグラフという、朝日新聞の発行していた雑誌によって作られました。(『ニュース制作現場だから分かった 「朝日新聞」もう一つの読み方』渡辺龍太)
 3.11東日本大震災と福島第一原発事故のあと、マスメディアやインターネット上でさまざまなひとたちが「日本」や「日本人」について論じた。その論旨は、おおよそ次の1行で要約できる。

 日本の被災者は世界を感動させ、日本の政治は国民を絶望させた。

 ここには2種類の、まったく異なる日本人がいる。

(『(日本人)橘玲
 次の1と2のうち、どちらが正しいだろうか。

 1.地震や火事に巻きこまれると、多くの人びとはパニックになる。
 2.地震や火事に巻きこまれても、多くの人びとはパニックにならない。

 答えは2である。

(『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠)

災害
 わたしは人生に間違った誇りを持たないようにしている。しかし、7年かけてこの商売の基礎を築いた。こつこつ働くだけであまり金にならない仕事だが、やりたくないことはやらないできた。だから、だれかが割り込んできて、頼みもしないことをわたしのためにやったら、麦芽入りココアをのようには飲んでいられない。(『A型の女マイクル・Z・リューイン:皆藤幸蔵訳)
 哲学者のジョージ・サンタヤーナは、歴史に関する有名な金言を残した。「過去に学ばない者は、過ちを繰り返す定めにある」。(『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』ピーター・ウォード、ジョゼフ・カーシュヴィンク:梶山あゆみ訳)