さて、このような大乗仏教の教義を支える最も根底にあるのは、やはり「空」の思想であろう。特に、我(主体的存在)の空のみではなく、法(客観的存在)の空をも説いたことが、我の空しか説かなかった部派仏教とは、決定的に異なる点であった。(『インド仏教の歴史 「覚り」と「空」竹村牧男