長いあいだ科学者たちは、空が夜暗いという事実を不思議に思っていた。宇宙には何兆という数の星があってどちらの方向にも星はあるはずで、星の光が地球にとどくのをじゃまするものはほとんどないのだから、空は星の光でいっぱいのはずなのになぜ暗いのだろうと思っていた。
 そこで科学者たちは、宇宙が膨張しているのだと考えた。ビッグバンのあと星はたがいにすごい速度ではなれていっている。われわれから遠ければ遠いほど速い速度で動いていく、そのなかのあるものは光の速度くらい速い、だから星の光がわれわれのところにとどかないのだと考えた。
(『夜中に犬に起こった奇妙な事件マーク・ハッドン小尾芙佐訳)