私が言いたいのは、この世界は大きくて恐ろしくて騒々しくて狂っていて、でもとても美しい、でも嵐のまっただなかにいるということだ。
 私が言いたいのは、もし私が色を人間と考えるとすると、人間を硬くて白い白墨(チョーク)、さもなければ茶色の、または黒いチョークと考えるとすると、それがどんなちがいがあるのかということだ。
 私が言いたいのは、なにが好きかなにを望んでいるか私にはわかっているということ、そして彼女にはわかっていないということ、それから彼女が私に好きになってほしいもの、望んでほしいものを、私は好きでもなく望みもしないということだ。
(『くらやみの速さはどれくらい』エリザベス・ムーン:小尾芙佐訳)