遠くで竜巻がひだ飾りのついたドレスをひるがえし、神がかり状態の呪術師を思わせる不気味な踊りを繰り広げている。そのヒステリックな動きも、拷問にかけられた者が天に差し伸べる二本の腕のような、石灰化した二本のヤシの木にこびりついた粉塵を払うことはできない。夜が退却し敗走するときに忘れていった、あるかないかのような風も、うだるような暑さに呑み込まれてしまった。(『カブールの燕たちヤスミナ・カドラ: 香川由利子訳)