突きでた駅の屋根の下から、暗い町並みに降る激しい雨を見た。豪雨だった。雨水の流れる路面は川のようだ。駅前の広場にある樹木が風にかたむきながら揺れている。突然、あの青年の声がよみがえった。強い子だな、きみは。いや、ちがう。あの雨のなか、胸をはり、頭をあげ、ゆっくり歩いていった青年。彼こそがほんとうに強い人間だった。(『雪が降る藤原伊織