旋盤工になるためには、腕も磨くが、耳も鍛えなければならない。耳を鍛えるという言葉が適当でないとすれば、耳を肥やす、かも知れない。むろん、眼も肥やさなければいけない。旋盤工に限らず、およそモノを作る人間の腕を磨くとか、腕前とかの言葉には、手先の器用さのほかに、耳や眼や鼻などの五官が、重要な役割を果たすものとして含まれる。(『鉄を削る 町工場の技術小関智弘