聖人とは、神の声を聴くことのできる人をいう。
 それゆえ、予言を的中させた人も、神の声の伝達者とみなされ、聖人とよばれるのである。
 ただし卜占(ぼくせん)をおこなう者は聖人とはよばれない。かれらは聖職者であり官人でもあったのだが、一種の技術者とみなされ、その技術に伝統があるがゆえに、かれらの予言は有識者を驚倒させない。
(『奇貨居くべし宮城谷昌光