苦しみに遭遇したとき、その苦しみからすみやかにのがれようとするから、かえって苦しみに捉(とら)えられる。
 ――いっそ苦しみを満喫(まんきつ)してやれ。
 と呂不韋〈りょふい〉はおもった。
(『奇貨居くべし宮城谷昌光