しかし、グローバル化が速度を増して進むなかで、何かが変わってしまった。かつて異文化の狂気の概念にみられた多様性は、休息に姿を消しはじめた。アメリカで認識されて社会に広められたいくつかの精神疾患――うつ、PTSD、拒食症など――は、今や文化の壁を越えて世界中へ伝染病のように広がっている。土地固有の精神疾患はアメリカ製の疾病分類や治療法によって、押しつぶされつつある。(『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ:阿部宏美訳)