田氏の家は矮(ひく)く狭い。しかし暗くもなく貧しくもない。
 田氏の妻がもっている豊かさと明るさとが、そうさせている。楽毅はかの女をみて、
 ――ああ、女とは、一家の宝なのだな。
 と、つくづく思った。
(『楽毅宮城谷昌光