すなわち、ここで挙げた日本が直面する数々の危機的状況は、決して一過性のものでもなければ、個々の無関係な危機の集積でもない。日本が文明の衰退期にあるからこそ、同時多発的に噴出してくる「歴史的危機」ではないのか、という観点から考えてみる必要があるのかもしれない。それは、いわば「戦後文明」とも呼べる、この数十年の日本社会の生き方としての「危機」なのではないか。(『国民の文明史中西輝政