彼は、彫像を彫(ほ)り終えた、と思い込んでいた。
 しかし実際には、たえず同じところに鑿(のみ)を打ちこんでいたにすぎない。
 一心に、というより、むしろ途方にくれて。
(『絶望名人カフカの人生論』フランツ・カフカ:頭木弘樹編訳)