もとより、われらは鎌倉時代の偉大な仏教改革者にたいして、尊敬を払うものである。しかし、大いなるものの建設は、大いなるものの否定によって可能である。鎌倉時代の仏教改革者の仕事の大きさを知るためには、それ以前の日本の仏教の大きさと深さを知らねばならない。空海を貴族にとりいった一人の祈祷僧と片づけて、どうして伝統の大きさを知ることができようか。(『生命の海「空海」 仏教の思想9』宮坂宥勝、梅原猛