ギリシア人が使用し始めた「アジア」、「ヨーロッパ」の語源は、太田秀通氏によれば、【フェニキア語】のアシュー(陽の昇る場所、東)、エレブ(陽の沈む場所、西)であろうとされ、さらにこのフェニキア語自体の語源となったのは、アッシリア語の(始め)、(闇)であるといわれます。この場合注意したいのは、語源とされる言葉が朝の始まる方向と、そのときまだ暗い場所、つまりは東・西といった意味をもつだけで、どれも、優劣に関わる価値評価が含まれていないことです。ギリシア人がこれらの言葉を借用してヨーロッパ、アジアという単語を使用し始めたときも、それは同様だったと考えられます。
 しかし【ヘロドトス】では、ヨーロッパとアジアは、特質を異にする対立的な二大世界となっています。
(『世界史とヨーロッパ ヘロドトスからウォーラーステインまで岡崎勝世