街の至るところ、人を惑わす厄介の実が成っている。
 時ならずそれを拾って食い、さもなければ、誰かから口のなかへ突っ込まれ、苦難の毒にまみれてしまった、朽ちかけの葦のごとき病者たちが、跡を絶たずこの島を訪れる。
(『葦笛の鳴るところ』福永十津)