沈黙には多くの性質がある。音と音の間の沈黙、ふたつの調べの間の沈黙があり、また思考と思考の間隙で広がっていく沈黙がある。あるいは田舎の夕暮れに訪れるあの不思議な静寂のうちに、四面に広がっていく沈黙がある。また、どこかの犬の遠吠えや急な斜面を登るときの汽車の汽笛の背後にある沈黙、家中の者がすべて眠りについたときに家の中に生まれる沈黙、さらには真夜中にただひとり目覚め、谷間でほうほうと鳴くふくろうの声を耳にしたときの異様に深々と強まりゆく沈黙。さらにはふくろうの仲間が応え返す前の沈黙がある。あるいは古い廃屋のまわりに漂う沈黙があり、山の持つ沈黙がある。さらには互いに同じものを見、おなじことを感じ、同じことをしたふたりの間に生まれる沈黙がある。(『クリシュナムルティの瞑想録 自由への飛翔J・クリシュナムルティ:大野純一訳)