暴力とは一時の感情において、もしくは自分の利益のみを考慮して、他者の精神や身体を傷つける行為であり、その暴力を抑止して平和と共存を作り出すものが理性である。理性は感情や欲望の激発を押さえ、自分の行動を首尾一貫させ、自然を合理的に制御して、人生の長期的な利益を実現させる。それと同時に理性は、個々人の無反省な利益追求を抑制し、人々のあいだに共存の枠組みを作り上げ、社会全体に長期的な利益をもたらす。理性と暴力の関係とはこのようなものである。(『理性の暴力 日本社会の病理学』古賀徹)