たとえば、ものがないことを表す記号である0を考えてみよう。ゼロの概念の一部は、紀元前300年頃にバビロニアで誕生した。完全な形になったのは、それから1000年後、インドでその概念と無を表す記号とが結びつけられたときだった。さらに400年経ち、この記号はヨーロッパに伝わったが、はじめのうちは危険な概念として遠ざけられていた。17世紀になると広く受け入れられ、現在では、使われているあらゆる数を定義する上で欠かせなくなっている。(『「無」の科学』ジェレミー・ウェッブ:水谷淳訳)